アクセス過多による負荷分散を目的にレンタルサーバーでロードバランサーを構築したいと考えているIT担当者もいるかと思います。
この記事ではロードバランサーの仕組みや導入するメリットについて解説します。特にECサイトのような商用サービスの運営を考えている方は、ぜひロードバランサーについて理解を深めてください。
また、記事の最後でロードバランサーに対応しているレンタルサーバーをいくつかまとめますので、検討する際の参考にしてください。
ロードバランサーの役割と仕組みを解説
まずはロードバランサーについてあまり詳しくない方向けに、その役割と仕組みについて解説します。
ロードバランサーの役割は負荷分散
ロードバランサーには、外部ネットワークからのアクセスを複数のサーバーに振り分けることで、それぞれのサーバーにかかる負荷を分散させる役割があります。
通常クライアントからサーバーにアクセスがあると、サーバーに搭載されたCPUやメモリを使用してその処理をおこないます。
アクセスが少ないうちは問題ありませんが、何らかの理由でアクセスが過多の状況に陥ると、メモリリソースを使い切ってしまい、ページの読み込みに時間がかかったり、表示されなくなったりするようなトラブルが発生します。
このようなトラブルを防止するために負荷(ロード)を分散(バランシング)する仕組みのことをロードバランサーと呼びます。
ロードバランサーは以下のようなビジネス向けサーバーのオプション機能として提供されています。
- 専用サーバー
- ベアメタルサーバー
- クラウドサーバー
- VPS
実際にロードバランサーを導入した構成を紹介します。
引用:ロードバランサー - SAKURA internet
上の画像はさくらのレンタルサーバーの公式サイトに掲載されている構成です。
また、以下の画像はQicクラウドで紹介されていたベアメタルサーバーを使った構築例です。
引用:構成例 - Qicクラウド
基本的にロードバランサーはWebの上位に設置し、クライアントからのアクセスを振り分けます。
ロードバランサーの仕組みは2種類
ロードバランサーはクライアントからのパケットをロードバランサー配下にある複数のサーバーに振り分けることで負荷分散をおこなう仕組みです。
実はロードバランシング(負荷分散)には「スタティック」と「ダイナミック」の2種類があります。
また、それぞれに対応する機能が存在します。
代表的なのはスタティックの「Round Robin(ラウンドロビン)」とダイナミックの「Least Connection(リーストコネクション)」です。
ラウンドロビンはクライアントからのリクエストを複数のサーバーに均等に送る仕組みです。また、リーストコネクションは現在のコネクション数が最も少ないサーバーに転送する仕組みとなります。
ロードバランシングとひと言で言っても、負荷分散には種類があることを覚えておきましょう。
ロードバランサーをレンタルサーバーで導入するメリット
ロードバランサーを導入することで得られるメリットは大きく分けて3つあります。
大規模サイトをスムーズに運用できる
大規模なECサイトなどでは、商品検索や掲示板のような動的コンテンツが利用されています。
動的コンテンツは、クライアントからのリクエストごとにコンテンツを生成する仕組みのため、アクセス数が増えるほどサーバーのパフォーマンスが低下します。
このような環境でもロードバランサーを導入していれば、複数のサーバーにアクセスを分散することができるため、サービス品質の低下・停止を防ぐことができます。
サーバーのメンテナンスがしやすい
ロードバランサーを配置した複数サーバー構成の環境では、1台のサーバーに障害があったとしても、クライアントからのリクエストを障害のない他のサーバーに振ってくれます。これにより、サービスを止めることなく故障したサーバーのメンテナンスをおこなうことができます。
負荷分散だけでなくアクセス障害に強い点もロードバランサーが持つメリットのひとつです。
パーシステンスによりセッションを維持する
パーシステンスは特定のユーザーからのアクセスを特定のサーバーに振り分け続ける機能です。これによりWebアプリケーションのトランザクションの整合性を保持することができます。
特にECサイトでは同一クライアントからのリクエストを同じサーバーに転送し処理する必要があるため、パーシステンスの機能は必須です。
ロードバランサーをレンタルサーバーで導入しないリスクは2つ
もしもロードバランサーを導入しないとどのようなリスクがあるのでしょうか?大まかにまとめると以下の2点がリスクになります。
アクセス過多によるページ表示速度の遅延
ロードバランサーのない構成ではアクセス数が増えるとサーバーに負荷がかかり、結果としてWebページの表示に時間がかかります。
ページの表示速度は、現在のSEO対策で重要な項目のひとつです。
ページの表示が遅ければユーザーの離脱率も上がってしまうため、特にアクセス数の多いWebサイトを運営するならロードバランサーは必要不可欠な装置です。
サーバーがダウンにより機会損失が発生する
ロードバランサーのような複数台構成をせず、ひとつのサーバーでサービスを運用していると、万が一障害があった場合にサービスが止まってしまいます。
あなたがアフィリエイトやネットショッピングといったビジネスをおこなっている場合、サービスの停止は販売機会の損失につながるため、対策が必要です。
ロードバランサーに対応したレンタルサーバーを紹介
ロードバランサーを利用することがレンタルサーバーをいくつか紹介します。
CPIマネージド専用サーバー
株式会社KDDIが運営するビジネスユーザーに人気のレンタルサーバーが「CPIマネージド専用サーバー」です。
高速回線の大容量バックボーンを持ち、アクセスが多くてもスムーズにサイトを表示します。また、稼働率は100%保証のSLAを導入しています。
ロードバランシングはTCP/IP(トランスポート層)で判断する「L4ロードバランサー」を実装しているため、同一IPを同じサーバーに振り分けてセッションを維持します。
さくらの専用サーバー
さくらのレンタルサーバーはレンタルサーバーの老舗「さくらインターネット」が運営しています。
ロードバランサーは「さくらの専用サーバー」のオプションサービスとして提供されており、L4(トランスポート層)とL7(アプリケーション層)レベルによる負荷分散に対応しています。
これにより、IPアドレスの他、HTTPやFTPの情報をベースにした負荷分散も実現できます。
KAGOYA
カゴヤ・ジャパン株式会社の運営するレンタルサーバーです。
セキュリティとサポート体制が評判の会社で、共用サーバー、専用サーバー、VPS、クラウドと幅広いサーバープランが用意されているためビジネス用途にあわせた運用が可能です。
ロードバランサーは専用サーバーの中でもFLEXベアメタルサーバーのオプションサービスとして提供されています。また、マネージド クラウド for WEBにおいても、複数台構成として、ロードバランサーの例が載っています。
この記事のポイントをまとめます
最後にもう一度レンタルサーバーにおけるロードバランサーのメリットをまとめます。
- 大量のアクセスが発生してもサービス品質の低下・停止を防ぐことができる
- クライアントの接続を切らずに、故障したサーバーのメンテナンスが可能になる
- パーシステンス機能によりトランザクションの整合性を保持することができる
オプション料金はかかりますが、大規模サイトを構築する上で欠かせない機能なので、ぜひ検討してみてください。